オイラーの多面体定理
宇治山田高校2年生のYちゃんからの質問。問題文の横にフラーレン(C60)の図があったので化学かと思いきや数学の問題で、なかなか面白い内容でした。
フラーレンは炭素の同素体として化学で学習します。その立体構造は正五角形と正六角形の面からなる多面体の形をとります。立体の頂点に位置する炭素の数は60、70、76、80など複数の種類が存在するのですが、正五角形の面の数は一定であることを証明せよという問題です。どこから手をつけたらよいか悩ましいですよね。
問題の内容を整理すると、正五角形と正六角形のみの面からなる多面体は面の総数にかかわらず正五角形の面の数が変わらないことを示せということです。
ここで登場するのが『オイラーの多面体定理』で
頂点の数-辺の数+面の数=2
という関係式。
そして、この問題を解くカギは“一つの頂点に集まる面の数”です。正五角形と正六角形の面の数をそれぞれ $ x $ 個、$ y $ 個 とおくと(辺の数)$ = \frac{5x+6y}{2} $ と(面の数)$ = x+y $ は表せますが(頂点の数)は一つの頂点に集まる面の数が分からないと決まりません。
わかりづらいときは【具体的に】検討するのが数学の鉄則。正五角形と正六角形の一つの内角の大きさはそれぞれ108°と120°ですから一つの頂点に4つ以上の面が集まれない(360°を超えてしまう)ことがわかります。また、立体を構成するためには一つの頂点に3つ以上の面が集まる必要るため、一つの頂点に集まる面の数が3つに決まります。ここに気づくことがポイントですね。
これで(頂点の数)$ = \frac{5x+6y}{3} $ と表せるのでオイラーの式に代入すると $ \frac{5x+6y}{3} – \frac{5x+6y}{2} + x+y = 2 $
になります。この等式を分母をはらって整理すると $ y $の項が消えて $ x = 12 $ となり、正五角形の面の数が12で一定ということが示せました。めでたしめでたし。